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古田 琢哉
医学物理, 37(3), p.177 - 180, 2017/00
放射線感受性のある化学物質を含む水溶液をゲル化させたゲル線量計は、照射放射線による線量分布を三次元で測定できるツールである。このゲル線量計を用いて、粒子線治療に即した状況での生体物質中での線量分布を実測した研究について解説する。この研究では実測結果を粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いたシミュレーションの結果と比較検証することで、現状の粒子線治療モンテカルロシミュレーションの精度を調べた。不均質な生体物質中を通過することで形成された実測の複雑な飛程端形状を2mm程度の違いの範囲でシミュレーションが十分再現することが示された。また、ゲル線量計が三次元の線量分布を可視化できる優れたツールであり、現状の計算シミュレーションの精度検証の他、将来的に治療ビームの品質保証等の用途に使用できる可能性が分かった。
知見 康弘; 岩瀬 彰宏; 石川 法人; 神原 正*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 193(1-4), p.248 - 252, 2002/06
被引用回数:2 パーセンタイル:18.93(Instruments & Instrumentation)鉄における電子励起効果について欠陥生成に焦点を絞って議論する。鉄薄膜試料(厚さ~200nm)に低温(~77K)で2MeV電子線,~1MeVイオン,~100MeV重イオン,GeV重イオンを照射して、そのときの電気抵抗の変化から試料への欠陥蓄積挙動を系統的に調べた。照射中の欠陥蓄積挙動を解析することにより、各照射粒子に対する欠陥生成断面積が得られた。電子線と~1MeVイオンの効果との比較により、~100MeV,GeV重イオンにおける電子励起の欠陥生成断面積への寄与分を抽出することができた。比較的高い電子励起密度をもたらすイオンでは、電子励起による欠陥生成が支配的になり、さらにその断面積は、電子的阻止能よりも初期イオン化率によってうまくスケーリングされることがわかった。このことは、「クーロン爆発」が欠陥生成をトリガーできることを示唆している。
伊藤 久義; D.Cha*; 磯谷 順一*; 河裾 厚男; 大島 武; 岡田 漱平; 梨山 勇
Proceedings of 3rd International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application, p.28 - 33, 1998/00
電子線や原子炉中性子を照射した六方晶炭化珪素(6H-SiC)半導体単結晶における欠陥の構造とアニール挙動を電子スピン共鳴(ESR)法を用いて調べた。照射n型6H-SiCにおいては、照射欠陥に起因する3種類のESR信号(NA,NB,NC)を見い出した。一方、照射p型6H-SiCでは、2種類のESR信号(PA,PB)が検出された。解析の結果、NA及びPA信号は同一の欠陥(Si単一空孔)に起因することが解った。NB,NC信号は、電子スピン2個の微細相互作用により説明でき、各々Si空孔-格子間原子対、二重空孔に起因すると推測される。PB信号については、Si核スピンとの超微細相互作用による構造が観測された。角度依存性等の解析の結果より、PB中心はC単一空孔であると結論できる。また、等時アニールの結果、NB,NC中心は各々約800C、約200C、PB中心は約150Cで消失することが解った。
土井 健治
Journal of Non-Crystalline Solids, 68, p.17 - 32, 1984/00
被引用回数:4 パーセンタイル:49.57(Materials Science, Ceramics)非晶質金属の構造模型である乱雑最密充填模型(DRP模型)の持つ諸特性を検付し、これが完全非晶質固体の模型として機能することをたしかめた。DRP模型内の原子配置のトポロジーは、曲率をもった空間内での球の正四面体的配置を、まっすぐな空間へと射像したものとして定義される。エネルギー論的には、これは残余エントロピーがゼロである系として定義される。以上の議論の正当性は金属ガラスの照射効果、冷間加工効果の実験結果がDRP模型によって統一的な解釈できるという事実によってたしかめられた。このような議論は石英ガラスのような系にも拡張できる。ここではDRP模型の変わりに連続乱雑網目模型(CRN模型)が問題となるが、このCRN模型とはDRP模型とトポロジー的に等価なものである。
森林 健悟
no journal, ,
電場による脳腫瘍の治療の臨床実験が行われたが、その治療のメカニズムとして電場が細胞中の極性分子を活発に運動させるためと考えられている。そこで、重粒子線照射で強い電場が生じることを以前のシミュレーション研究で明らかにしたが、この電場も極性分子に影響与える可能性があると考え、極性分子の運動の研究を行うことにした。最初の研究として、極性分子のうち細胞中に最も多い水分子を取り扱い、重粒子線照射で生じる水分子イオンのクーロン爆発及び水分子イオンが作りだす電場による中性分子の回転、並進運動のシミュレーションを行った。その結果、イオンの運動では、照射後100フェムト秒程度で移動をはじめ、電場は重粒子線の軌道付近では減少させるが、軌道から1nm以上離れた場所では、変化しないことがわかった。また、中性の水分子は重粒子線の軌道方向に運動すること及び軌道付近において中性の水分子の密度が増加することもわかった。すなわち、重粒子線で生じる電場は、極性分子に大きな影響を与える可能性があることを明らかにした。